2006年5月アーカイブ

一枚の絵画展

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 館の2階南詰め、龍馬の見た海を体感するポイント、“空白のステージ”で、一枚の絵画展を開いている。
 作者は坂本直行。六花亭のお菓子の包装紙に描かれた、花の絵の作者。そして坂本龍馬の子孫。しかし、これらのことはあまり知られていない。
ご本人がしゃべりたがらず、生涯“おれはおれ”を貫いたのが強く影響している。北海道十勝の開拓農民として入植し、一方、身の回りの自然を、絵に描くことで愛した。おもねらず、媚びず、堂々と生きた。今年、生誕100年。北海道帯広の地元では顕彰の展覧会も開催中だ。
 坂本龍馬記念館では、今年11月、直行さんの絵画展を、館を舞台に開催する。現在準備中である。作業過程で、坂本家ゆかりのお宅で、二点の直行作品をお借りできた。秋と初夏の日高連峰を描いた小品で、直行さんのメッセージが伝わってくるいい作品である。
 眺めているうちに絵画展まで収蔵庫にしまっておくのはもったいなくなった。少しでも早く、多くの人に鑑賞してもらおうとの思いに駆られ、「一枚の絵画展」の運びとなった。
 まずは初夏の、緑あふるる日高である。雪の連峰が映えている。そばに直行さんの略歴と、11月からのポスターも掲示した。
 眼前に広がる水平線。横に目線を振ればみどりの日高だ。不思議に違和感がない。海に山が、山に海が溶け込んでいく。
 腕組した若者が、じっと絵に見入っている。
 彼はそれより先に常設展示で龍馬の手紙を読んでるはずである。
龍馬と直行、直行と龍馬。腕組解いた彼は、今度はベンチに座って目線を海に投げた。
筋状の波が寄せてきて、浜に白い飛まつを上げた。少し風あり。梅雨近しを思わせる白さであった。

雨の降る記念館

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「海の見える窓」第1回、館長の「専ら修理に追われている」というメッセージを覚えているでしょうか?
修理の原因のひとつ、雨漏りは相変わらず直ることなく、職員は対応に追われている。

5月に入り雨が続き、おまけに先日は大雨警報がでた。
以前のように「ここは外?」と思うほどの雨漏りはもうないはずだが、大雨警報となると自然に雨漏りの話題になる。
「いっそバケツアートという展示にしたら」とか、「入り口で傘を配って“館内で雨が体験できます”というのを売りにしたら」とか、冗談とも本気ともつかない案で職員は盛り上がってしまった。

一昨年の台風あたり年に来館されたお客様は、バケツの並んだ館内に驚かれたことでしょう。
昨年は、台風も少なかったが、さて今年は・・・?

他にもいい案があれば、記念館までお知らせください。

 先日、札幌にいる坂本ツルさんと電話で話をした。「今、庭のカタクリがとってもきれいなんですよ。サクラも終わりました」と言う声が明るい。今年89歳とは思えない実に涼やかな声だ。電話であってもこの声に出会うとその日一日の力が沸く。
 カタクリは春を告げる可憐な花。高山や北国に良く似合う。直行もよく描いた花だ。

 「忙しくて2週間程行って見なかったら、樹林地にはもう一面に若草が萌えて、明るい緑に蔽われていた。カタクリのピンクの花が一面に散らばって居たし、その間にエンレイ草やフクベラ(二輪草)の花が美しくちりばめられて居た。北斜面にはオオサクラ草の目を射るような濃いピンクの花の群れが有った。オオサクラ草の葉は、甘たるい良い香りがする。」(「開墾の記」)
 「山の姿を描き終つた僕は、安心感と満足感で、今度はおちついて丘の上の若草に腰をおろして、煙草を吸いながら美しい山波と牧場をながめた。・・・・・場長宅の縁側からアポイが見える。これもなつかしい山だ。少し残雪があるのは、何か拾いものをしたような気持だった。僕は若草の露を踏んで牧場の道を歩いた。そして樹林の下に、なつかしいオオサクラ草とオオバナノエンレイ草を見た。そのほか、ニリン草、カタクリ、エゾリュウキンカもあった。なつかしいというのは、僕はこんな美しい野の花と、35年間もいっしょに暮らしたからである。」(「山の仲間と五十年」秀岳荘記念誌)

 旅行者にとって美しくロマンティックな白樺林や柏林。しかしそこは、開墾者に痩せた土地と過酷な労働を強いる場所だった。冬は一層厳しいものだ。それだけに春は開墾者に喜びをもたらす。直行は春の喜びを隠さない。
 「くる春もくる春も、いつも同じような環境の変化を伴ってくるのではあるが、私達は毎春新しい喜びを感じた。初めて眺める春のように思われた。」(「開墾の記」)

 カタクリの花を喜ぶツルさんの声は、今も昔も同じように北の大地に響いていたに違いない。                                                      

小さな訪問者

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 4月からこちらへ勤務するようになり色々なことが新鮮である。
 その一つ、2階で仕事をしていると、時々コツコツ、コツコツと物音が聞こえてくる。最初は何の音だろうと思っていたのだが、それはものすごい勢いと速さでガラスの壁面をつつく小さな訪問者、シジュウカラのガラスをつつく音だった。
 ほとんど毎日のようにどこからか飛んで来てはガラスをせっせとつついている。キツツキのような鳥の習性なのか、それともガラスに写る姿を見ているのかその目的はよくわからない。けれども小さな身体から出されるその力強い音には生命力と存在の頼もしさを感じる。
 そーと近付いて行くと、いつも飛び去ってしまう。でも明日もまた海風に乗って遊びに来るのだろうかと想像するだけで、優しく豊かな気持ちにしてくれるのである。

 「今年の連休は長いな」というのが、カレンダーを見た感想だった。後半の人出を予想していたが、予想以上に多くの来館者で館は賑わっている。館内外いたる所に人がいて、龍馬と出会っている感じである。実に楽しい。
 この季節の人たちは軽装になって、身も心も軽やかに見える。入館して来るのは、カップル、家族連れ、友達同士、一人など様ざま。二人連れはほとんどが手をつないでいるし、子どもたちもおとなの間を走っていたり、「おーい!竜馬」の上映に夢中だったりする。「ここはお菓子を食べちゃいけない場所なのよ」と静かに注意する若いお母さんにも出会う。ここは博物館であるけれども、龍馬に出会う自由な場所なのだ。ひとつひとつが、龍馬も微笑むような光景である。
 今開催中の「龍馬こども検定」は○×式の100問テストで、難しい規定はない。館内は自由に見ていいし、親子で考えたっていいのだ。これが実にいい親子のコミュニケーションになっているように思う。日ごろ仕事に熱中しているお父さんが威信を取り戻すかのように、わが子に龍馬や歴史のことを語っている。分かったような分からないような顔の子ども達に、お父さんは大きく映っているようだ。答案用紙は子どもの名前なのに、おとなの文字だったりする。それでも、親子一緒に龍馬のことを考えた時間があるだけでいい。こどもの日の小さな思い出のひとコマに、龍馬が貢献できたのだ。
 たくさんの方が開館を待ってくださるので、できるだけ早く館を開けている。閉館はふだんより1時間長い。駐車場整理する男性職員は真っ黒に日焼けした。日本各地のカーナンバーが並び、桂浜へ向かう車の列は止まらない。
 緑が濃くなり始めた山々。青い海は弓状に大きく広がっている。土佐の中央、海に面したこの小さな半島に日本中からたくさんの人々がやって来てくれた。夏に向かうさわやかな5月の連休である。

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