出版社のAさんの話

 出版社のAさんが、このところ、龍馬記念館に日参である。
 日を追うごとに足どりが軽くなってきた。
 口も軽い。
 笑顔も出てきた。
 Aさんには、今回、龍馬記念館の入館者が龍馬に寄せて書いた手紙「拝啓龍馬殿」の製本化を依頼している。これは手紙12,000通から1,500通を選び一冊にまとめたものである。本の題名は土佐弁で「ほいたら待ちゆうき 龍馬」。訳すと、龍馬が「分かった、待っていますよ」という意味。作業に着手してから1年になる。いよいよラストスパートに入った。

 ただ、ここにくるまでに、Aさんとは幾度となく意見が衝突した。
 その苦労がやっと実ろうとしているのだ。
 笑顔のAさんが今や主導権を握った。
「さあ、皆さんがどう反応してくれるか。内容は言うことなしなんだから」
Aさんは龍馬ファンでもある。龍馬とファン、両者は“個人回線”で繋がっている。会話は心のやり取りである。
「龍馬監修の“心の辞書です”」AさんのVサインは肩の上であった。
 本は月末から全国の書店に並ぶ。

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