2008年10月アーカイブ

"会いたい"思い

 見つめ合った瞬間、もう目が赤い。
親指と人差し指が目頭にゆく。
口元は震えていた。
「やえきさん!覚えちゅうかね。須崎の!」
「分かる、分かる!すさきの ○○さん!」
男同士、握り合った手がもう抱き合っていた。

 館の「海の見える・ぎゃらりい」が今、演歌そこのけ、“涙の再会場”になっている。
ギャラリーでは洋画家、挿絵画家の吉松八重樹さん(82)の油絵と挿絵の展示している。
題して「吉松八重樹と故郷との出会い」展(11月16日)
上野の森美術鑑賞を受賞した大作50号の油絵、川端康成もほめた「雪国」駒子の挿絵。
約100点が並ぶ。
東京在住の吉松さんは地元浦戸の出身である。
ただ、機会に恵まれず、30年ぶりの帰郷となった。
 地元の人たち、吉松さん、互いの“会いたい”思いがスパークしたのだ。

 次から次へと現れる友人、知人。
見つめあい抱き合う。
取り巻く絵と広がる海が、時代の歯車を逆回転させ、止める。
幸せ気分が館内に満ちてゆく。
「涙を流して体重が軽くなりました」三日目、ベレー帽の吉松さんは言いながらもう涙であった。
窓の外は、季節を急ぐ秋雨が、灰色の海に消えてゆく。

桂浜に『RYOMA』を描く

来月11月16日(日)桂浜で「龍馬まつり」が開催される。
少年剣道大会や宝探し、綱引き大会など多彩な行事が予定されている。
地元、浦戸地区の皆さんの企画は、
龍馬を呼ぼう!大漁旗と人のパフォーマンス“おーい龍馬”である。
これが面白い。
面白いが、結構手がかかる。ま、それだけにやりがいもあろうと言うもの。
簡単に言えば、桂浜の砂地に大漁旗を使って『RYOMA』の文字を描く。
ただ、立てたり敷いたりするのではない。
一枚2メートル×2.5メートルの大漁旗の四隅を人間一人ひとりが持つ。
これが“ミソ”である。
リーダーの合図で上げたり下げたり。
一回15分間のパフォーマンスを、午前と午後の2回演出する。
中で「おーーい龍馬」を合唱だ。
机上の計算では、動員800人が目標。
これが難題。地元だけでは当然足りそうにない。
そこで他のイベントに参加している人も、
観光客にも、もちろん大人、子供関係なし。
お手伝いを呼びかけることにしている。
桂浜の波と風。
大声で「おーーーい 龍馬あーーーー」
大合唱。
気分いいと思いませんか。

鳩がとまった

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10月の声を聞いて雨になった。
最初の土、日が雨。
季節はどうも一挙に秋を深める魂胆らしい。
煙る雨をついてその日曜日。
県知事と高知市長を先頭に観光行政に関わるお歴歴が桂浜にやって来た。
しかも浦戸湾を船で渡って、桂浜に上陸である。
実は、再来年のNHK大河ドラマが“龍馬伝”に決まったのはご承知のとおり。
これを県勢浮揚のきっかけにしよう、というのは日本国中同じ事だが、
しかし高知はやはり本家。
本家の中でも本家は銅像の立つ桂浜である。
必勝を期して銅像前の祈願祭となったわけだ。
「雨でも龍馬はやっぱりかっこいい」「世界を見ゆうぜよ」
一同、龍馬像の前に勢ぞろい。宮司さんの祝詞に頭を下げ、思いを込めた。

ふと、龍馬を見上げた。
眼鏡にかかった雨粒のせいか全体にぼやけ気味。
龍馬の頭頂部が少し変に見えた。
ちょんまげが前方にせり出してきた格好。
しかもそれがぴこぴこ動いた。
目を凝らす。13メートルの上空でやっと焦点を合わせた。
鳩ではないか。鳩が止まって下界を見下ろしている。そうだ、鳩は平和の使者。
龍馬のオーラが呼んだに違いない。
全員の玉ぐし奉奠が終わるのを待って、鳩は雨空に消えて行った。
眼鏡の雨粒をハンカチで拭った。
龍馬がまた幸せを運んできてくれるそんな気がした。

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