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DNAと出会い

 「孫にDNAを感じる!」とは、館長の言葉。自分の血が未来につながっていくことを、わが子よりも強く感じるらしい。強気なガッツマンも3歳の孫にはメロメロなんだろうな。ステキなことだ。
 龍馬をはじめ、幕末に活躍した方たちのご子孫にお目にかかる機会がある。時に、写真で見る幕末期の人と同じ顔に出会ったりもする。不思議で、愉快なひとときである。
 中でも長州藩士・三吉慎蔵のご子孫は、DNAを強く引き継いでいらっしゃるように思う。
 この夏、京都国立博物館の一室で初めてお目にかかった時、ひとめで三吉さんだと分かった。それは単に風貌だけでなく、龍馬が心から信頼した三吉慎蔵の誠実と優しさが伝わってきたから。その場には、長州旧家・伊藤九三や京都近江屋・井口新助のご子孫もいらっしゃった。どの方も、ご先祖のDNAを感じさせる風格と気品に満ちていた。そして、ご子孫でしか知りえないだろう先祖から語り継がれた話などをお聞きできたことも、実に楽しかった。幕末はまだ生きている。
 三吉さんに戻ろう。下関取材に行く前、「これから長州に行きます」という電話をした。その時ご本人はお留守で、奥様とお話をさせていただいたが、「最近お墓参りに行っていないので、代わりにご先祖によろしく伝えてくださいね」とおっしゃる。年上の人に失礼ながら、かわいい方だなと思った。長府博物館裏手で『三吉慎蔵』という墓碑に出会ったとき、思わず「こんにちは」と言ってしまいそうになったくらいだ。
 10月15、16日に、高知市で『第17回全国龍馬ファンの集い』が開催される。龍馬生誕170年の今年、そこでどんな出会いが生まれるのか。龍馬ゆかりの人々のDNAを通じて、幕末を感じられるかもしれない。

長崎紀行

 秋からの企画展「亀山社中と海援隊」に向けて、長崎、五島列島に行ってきた。
 春先から、丸亀・塩飽諸島を皮きりに、神戸、京都、下関、福山…と回った最終ラウンド。
 台風14号の影響で1週間延期した9月半ばの長崎出張は、夏に逆戻りしたような日差しと蒸し暑さの中をひたすら歩いた。(日焼けとシミがお土産に…?!)
 さすが長崎は歴史の街だと思った。何度か訪れたことのある街ではあるのだが、今回のような幕末を中心とした歴史探訪はもちろん初めて。実のところ、何度目かのグラバー邸ですら、龍馬との関わりなど知らなかった私には、角度を変えて見るとこんなにも街の表情が違うものかと驚かされた。
 丸山遊郭「引田屋」は現在、史跡料亭「花月」として363年の歴史そのままを来客に公開している。営業課・加藤さんの説明を聞きながら邸内を回っていると、その昔の男や女たちのさんざめきが、どこかしこから聞こえてくるようだった。女たちの笑いや悲しみが後ろから私を追いかけてくる。歴史は遠くにあるのではないなと思う。悲しみや喜びといった人の感情は、時代や価値観が変わってもそんなに変わらないのではないかと思うから。
 五島も強烈だった。ジェットコースターのような小型高速艇では、ワイルウェフ号乗組員気分でいたのだが、五島龍馬会の元漁労長・杉山さんは「あの時はそんなものじゃなかっただろう」と言う。池内蔵太たちの恐怖はどんなものだったのだろう。それにしても潮合崎を向こうに見る「龍馬ゆかりの地」を整備し顕彰する五島の人たちの思いは熱い。
 遠く時間を超えて異郷に息づく龍馬。何より、今を生きる人たちのまなざしの中にこそ、龍馬は生き続けている。現地の人たちとの出会いの中で、そのことを実感した。
 各地の龍馬会はじめ皆様のご協力がなければ、あれだけの史跡を巡ることは難しかったと思う。心より御礼、感謝申しあげます。

タイフーン・エナジー

 大型台風14号通過。
 この館で、2度目の秋が来ようとしている。
 去年の夏は台風の襲来が多く、休館も相次いだ。
来館者が去って、残留組の職員だけになると、ここはただ台風と向き合うだけの場所になる。
 高知といえば海に面した県だと思っている人も多いのだろうが、実はここは森林率日本一の山の県。だから、市中に住む私にとって海は出かけて行く場所だったのだが、ここに来て海は近しい友人となった。朝夕の通勤時には海岸線の多いコースを通っているので、なおさら海の表情とは親しいつきあいだ。
 遠く東シナ海で生まれた波も次第にここにやって来る。穏やかな天候が続いているようでも、海は遠くの波涛を教えてくれる。海は地球上の水たまりなどではなく、鼓動し、動き、おしゃべりし、時に眠る、大きな生き物だと実感する。台風の時はなおさらだ。
 もともと土佐人の私としては、台風に対する畏敬とともにワクワクする気持ちがあるのも正直なところ。もちろん、台風が来て得も言えぬ昂奮を覚えるのは私だけではないはずだ。波を見に行こう!と思うし、波をかぶりながら突堤から海を眺める人々の背中はパワーを充電しているみたいにも見える。
 館から見る台風時の、海のうねり、風の力。大海に立ち向かう船のごとく、記念館は波と風に大きく揺れている。被災はともかく、台風には不思議な力がある。

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